「言っただろう。あれは亡者だって。沙希ちゃんの無念の思いにつけ込んだタチの悪い悪霊だ。沙希ちゃんは、お前を陥れるような人間とは違うだろう?」
ん? と東悟が私の顔を覗き込む。
そうなら、嬉しいんだけど。
「なあ、香織」
「うん?」
「こんな時に、なんだけど」
そう言って、ニカッと笑みを浮かべる東悟の瞳に、ちょっと悪戯小僧のような少年めいた光が揺れる。
「うん」
「俺は、お前に惚れ直したぜ!」
って東悟は、私をギュウギュウ抱きしめて、熱いキスをくれた。
――のは良いんだけど、あんパンと頭痛薬のミックス味がしたのだろう、『うげぇ』と言う顔をして、『水、水』と言いながら走って部屋を出て行ってしまった。



