東悟の話を聞き終えた私は、あんパンを一かじりして顆粒の頭痛薬を水で流し込み、傍らで胡座をかいて私の様子を眺めている東悟の顔を覗き込んだ。
「ねえ、東悟?」
「何?」
「あの時、あそこに現れたのは、沙希だったのかな?」
沙希の姿をしたあの霊。
私はあのとき、沙希じゃないと否定した。
でもそれは、私がそう思いたかっただけで、本当は間違いなく沙希だったのかも知れない。
今になって、そんな考えが頭をよぎる。
もしも、あの霊が沙希なら……。
私は沙希に憎まれていたことになる。
親友だと思っていたのは、私だけだったのかも。
そもそも、沙希が不倫に悩んでいたなんて、私は露ほども知らなかった。
ましてや、早苗ちゃんの事は未だに信じられない。
私は、一番近くにいながら沙希の事を何も知らない。
ううん。
知ろうとしなかった。
それだけでも十分、友人失格だ。
「違うよ」
「え?」
妙にきっぱり断言する東悟の返事に、私は思わず間の抜けた声を上げてしまった。



