『ねえ、香織』
「なあに、沙希。どうしたの?」
『今年のお盆休みは有給をまとめて取ったから、先に一人で帰郷する』と言っていた沙希が、出立間際、会社にいる私に電話をかけてきた。
『東悟君と、いつ結婚するの?』
「ええっ!?」
なにを、やぶからぼうに。
いきなり切り出されたセリフに驚いた私は、素っ頓狂な声を上げてしまった。
危うく携帯電話を落っことしそうになる。
幾ら人気の無い給湯室でも、こうるさい課長にでも聞きとがめられたら、やっかいだ。
私は周りに人が居ないのを素早く確認して、声のトーンを落とすと早口で囁いた。
「そんなの東悟に聞いてよ! 私一人じゃ結婚できないんだからっ。課長が来たらヤバイからもう切るね」
くすくすくす。
『分かったわ。そうする』



