――冷たいのね、東悟君。
頭の中に直接響いてきた声。
それは、間違いなく沙希の声だった。
「沙希!? 沙希なの!? 東悟、放して、沙希が来てる、沙希が来てるのよ!」
一瞬、緩んだ東悟の腕を振りほどいて、私は、辺りを見渡した。
「ここよ」
すぐ耳元で声がして、ギクリと振り返る。
目の前。
私の目の前に、沙希が立っていた。
いつもと変わらない、サラサラの癖のないストーレートな黒髪。
卵形の綺麗な顔の輪郭。
スッとして理知的な瞳。
形の良い唇が、ニコリと微笑んでいる。
「沙希? なんだ、ビックリさせないでよぉ。行方不明だなんて、心配したじゃないのっ」
安堵感で、鼻の奥に熱いモノがツンとこみ上げる。
「東悟なんて、沙希が死んだみたいな事言うのよ! 酷いでしょ?」
沙希は答えない。
ただ、哀しげな眼差しで、見ている。
私ではなく、東悟を。



