建物の中央付近に、白い人影が立っていた。
光源など無いはずなのに、その少女の姿だけが、スポットライトを当てたように浮かび上がっている。
風など無いのに、ユラユラと揺れている黄色い麦わら帽子の赤いリボン。
白いノースリーブのワンピースを着た少女が、楽しげな笑みを浮かべて、手を後ろに組んで立っていた。
「香織ちゃん、東悟君、私が分からないの?」
クスクス。
少女が、屈託無く笑う。
抜けるような白い肌。
少女らしい、丸い頬のライン。
その白い頬の両側で、耳の後ろで二つに結んだ色素の薄い茶色の髪が、彼女が笑うたびに軽やかに揺れている。
好奇心に富んだ、大きな黒目がちの瞳。
サクランボのような可憐な唇。
「ま……さか」
東悟が、呻くような声を絞り出す。
私も信じられない思いで、その少女の名を呼んだ。
「早苗……ちゃん? あなた、早苗ちゃんなの?」
新庄早苗。
幼い日。
私たちの後をいつも楽しそうに付いてきた、沙希の妹『早苗ちゃん』。
目の前の少女の顔は、記憶の中の彼女に良く似ていた。



