東悟は無言のまま険しい表情で、私の右手をがっちり掴んだまま本殿の木の階段を駆け上がり、木戸を勢いよく引いた。
中には明かりなど無いから真っ暗だ。
一瞬、その闇の濃さに足が竦んで、私は立ち止まった。
『香織……』
ためらう私の耳に、確かに自分を呼ぶ女の声が届く。
「え?」
沙希?
小さくか細い声。
でも確かにその声は、沙希の声だ。
「香織!」
振り返ろうとした私は、東悟に凄い力で本殿の中に引き込まれた。
あまりの勢いに、そのまま床に倒れ込んでしまう。
「痛っ、なにすんのよ、東悟!」
勢いよく転がり込んだせいで強か打ち付けた肘の痛みに堪えながら、文句を言う私の目前で、東悟が入り口の引き戸を必死で閉めようとしていた。
でも何故か、あと十五センチと言う所で戸は閉まり切らずに止まっている。
「と、東悟……?」
どうしたの? と言おうとして、私は凍り付いた。



