「家に戻るぞ」
「え?」
「いいから、家に行こう」
東悟は声を殺してそう囁くと、私の手をがっちりと掴んだ。
思いも寄らない強い力に、小さな悲鳴が口を突いて出る。
東悟はそのまま驚くくらいの強引さで、ぐいぐい私を引っ張っていく。
目的地は、お社から十メートルほど離れた東悟の自宅だ。
ついさっき家まで送ってくれると言ったばかりなのに、その舌の根が乾かないうちに今度は自宅に行くという。
有無を言わせぬ東悟の行動が、私の不安を駆り立てた。
「ちょ、ちょっとどうしたの!?」
こんなの、ぜんぜん東悟らしくない。
「駄目だ、間に合わない!」
私の質問など眼中にないように、東悟そう吐き捨てるように言い放ち、くるりときびすを返した。
今度は、すぐ近くにある神社の本殿に向かって私を引っ張っていく。
「と、東悟!? どうしたのよ!?」
ぐるぐる振り回される形になった私は、バランスを崩して前につんのめりそうになった。
それでも東悟の歩く速度は弱まるどころか、いっそう早くなっていく。



