-恐怖夜話-



「お、お父さん、大丈夫!? どこ、どこが痛いのっ!?」


母が荷物を放りだして、父のもとへ飛びつくように駆け寄る。


「う……ううっ!?」

「腰!? 腰が痛いの!?」


脂汗を浮かべながら、顔面蒼白で唸っている父。必死に症状を聞き出そうとする母。


そして私は、荷物を抱えたまま、金縛りにあったように棒立ちになってその様子をただ見ていた。


驚きと恐怖。


父の一大事だと言うのに、何も考えられない。


「美鈴っ! 部屋に電話があるから、救急車を呼んで!」


そ、そうだ、救急車!


母の叫び声に、私の呪縛が解ける。


母から鍵を受け取り、グレーのスチールドアの鍵穴にガチャガチャと乱暴に鍵を突っ込むと『カチン』と、古い割には軽快な音を響かせて鍵が開いた。