兄が運転してきたのだろう、エンジンがかかったままの車のライトに浮かび上がるのは、暗い砂利道。


倒れた自転車。


あの、『少年の姿をしたモノ』は、どもにも居ない。


私は自転車で倒れたまま、砂利道の真ん中で気を失っていた?


あれは、夢だったの?


――そうだ、ブランコ!


慌てて視線を巡らせすも、闇に抱かれた雑木林の中には枯れた草が絡み合うだけで、あの『子供用ブランコ』は見つけられない。


やっぱり、夢……だったのかな?


夢。


そうだ、あんな恐ろしいことは、夢に決まっている。


怖い、怖いってビクビクしていたから、あんな夢を見たんだ。


「ほら、帰るぞ。立てるか?」


いつになく優しい兄の声音に現実に引き戻された私は、どうにか立ち上がった。