「そうそう。住めば都って言うでしょう?」 溜息を付く私の脇を、これまた大荷物を抱えた母が通り過ぎて行く。 置いて行かれそうになった私は、慌てて二人の後を追った。 そりゃ、そうだけどさ。 どうせなら、綺麗なトコの方がいいじゃない? ヒヤリ――。 建物の中に一歩足を踏み入れた瞬間、首筋を冷たい空気が撫でた。 でもそれは一瞬のことで、すぐに外と同じ蒸れた空気が体中を包み込む。 「冷房?」 足を止めて、周りを見渡す。