-恐怖夜話-


「絵美! 絵美! どうした!? しっかりしろっ!」


聞き覚えのある声に呼ばれて、私は意識を取り戻した。


抱え起こしてくれる腕の温もりに促されるように、ゆっくりと、痺れたようになっていた五感が戻っていく。


「兄さ……ん」


心配げに覗き込む兄の顔を見て、一気に感情が溢れ出す。


「兄さんっ!」


やっとその時、恐怖と寒さで凍り付いていた涙が瞳から溢れて頬を伝い、兄の腕にしがみつきながら、まるで子供のように泣きじゃくった。


「どうしたんだ? 変な電話はかけてくるし、心配になって来てみれば道路の真ん中に倒れてるし」


「……えっ?」


訝しげな兄の言葉に、私はぼんやりと周囲を見渡した。