-恐怖夜話-


ゆっくりと、少年の深紅の口の端が、キュッと弧を描いてつり上がる。


ニタリ。


嗤っている。


逃げられない。


捕まってしまう。


ううん。もう既に、私は捕らえられているのかもしれない。


ほら。


その証拠に、体が動かない。


「いっしょに、の・ろ・う?」


クスクスと嗤いを含んだハイトーンの声が鼓膜から入り、私の思考を侵していく。


他には、何も聞こえない。


何も、考えられない。


絶望的な恐怖が、私の全てを支配する。


「ほら、のろうよ」


禍々しい笑顔が、視界いっぱいに広がったと思った瞬間、


ぷつっ――と、まるで電源が切れたように、私の意識はそこで途絶えた。