「武ちゃん……」 喉の奥に声が絡んで、武士を呼ぶ声が掠れた。 「……ああ」 「もう、大丈夫……よね?」 武士がそろそろと起き出し、手探りでベット脇の窓のカーテンを、少しだけ開けてみる。 日の出が近いのか、窓の外はもう白み始めていた。 黒い木々の向こうには、日常が戻って来たことを示すような薄青い空が広がっている。 もう陽が登る。 当たり前の日常が戻ってくるんだ。 覗き込んだ武士の瞳に宿る安堵の色を見いだして、緊張していた体の力がすうっと抜けていく。