-恐怖夜話-



耳の奥に、さっき聞いた重い足音が嫌になるくらいハッキリと甦る。


まさか――。


まさか、これって――。


ゾクリ。


背筋に、冷たいモノが走り抜ける。


まるで、トイレの床に縫い付けられたように、ぴくりとも動かない足。


ゾクゾクと足下から這い上がって体中にまとわりつく悪寒に、私は戦(おのの)いた。


や、やだぁ。


止めてよね。


こういうの、得意じゃないんだから。


も、戻らなきゃ。


そう思うのに。


心は全力疾走で逃げ出したいのに、足が動かない。


「恵子?」


「きゃぁあああっ!?」


いきなり背後から自分の名前を呼ばれた私は、文字通り飛び上がって、絶叫した。