私が唾を飲み込んだ次の瞬間、ツンと、コートの右裾を引かれた。
「お姉ちゃん……」
この場には一番不似合いな、ハイトーンの可愛らしい子供の声が耳に届いて、私は更にギクリと固まった。
ぎこちない動作で引かれたコートの先、自分の右足下に視線を這わせて、ひっと、思わず息をのむ。
そこに居たのは、幼い子供だった。
妙に白い、子供。
青白いような肌をした5歳くらいの男の子が、ニッコリと笑顔を浮かべて、私のコートの裾をぎゅっと掴んでいた。
少年らしい丸いラインの頬の下で、きゅっと上がる口角とは対照的に、ニコニコと下がる両方の目じり。
満面の笑顔に、一瞬今何処にいて何をしているのか分からなくなる。



