-恐怖夜話-


確かに何かを思い付いて思わず声を上げたのだけど、次の瞬間、それが何だったのか分からなくなってしまった。


知っているのに、思い出せない。


『どわすれ』というヤツだ。


心の奥がモヤモヤして、気持ち悪いことこの上ない。


そのモヤモヤの原因が何なのか考えながら、車のサイド・ミラー越しに小さくなっていく二つの影を、ぼんやりと目で追う。


まあ、大したことじゃないか――。


妙に口の中が乾いてしまった私は、ドリンクホルダーに手を伸ばし、もうすっかり冷めきった缶コーヒーをゴクリと一口、口に含んだ。


うわ。


まずっ……。


甘ったるいコーヒーの後味の悪さに辟易としつつ、やっぱり何となく気になって、再びチラリとバックミラーに視線を走らせる。


でも。


もう既に、二人の影は深い闇の中に溶けてしまって、見えなくなっていた。