「あれ? もう帰ってきたの? シロのトイレは済んだの?」
妙にのんびりした母の問いに、私は思わず膝の力がへなへなーと抜け落ちた。
そのまま、玄関にしゃがみ込んでしまう。
全力失速の余波で、暴れる呼吸に肩が大きく上下する。
勿論、シロは連れたままだ。
脱力した私の頬を、シロがベロベロと嬉しそうになめている。
妙に温かい感触が、ここはもう安全なのだと、教えてくれた。
た、助かった……。
私は、大きな安堵の溜息を付いた。
「何? どうかしたの、ゆう?」
はい。
どうかしました、お母ちゃん。
どこまで行っても、実にのんびりとした母の問いに、思わず、涙がちょちょ切れる。



