キョロキョロと視線だけを巡らせるが、真っ暗で何も見えない。 気のせい? そう思った。 否、そう思いこもうとした。 でも――。 ――ぎぃっ……。ぎぃっっ……。 又だ。又、同じ音。 ごくりと唾を飲み込んだその音が、やけに響く。 私の脳裏に、さっき視界をかすめた『白い影』が浮かんだ。 実は視界に飛び込んできた瞬間に『それ』がなんであるか、私は認識していた。 ただ、あまりにもこの状況にそぐわないので、意識的に気が付かないと思うことにしたのだ。 それは――。