午後八時。
カラオケボックスの狭くて薄暗い室内は、ノンアルコールにも係わらず、雰囲気だけで盛り上がった若い女教師二人の賑やかな独壇場と化していた。
「でさ、教頭が言う訳よー。『市川先生、いくら英語の先生でも居住まいは大和撫子であって欲しいものですね』ウォッホン!」
ウーロン茶を一口ぐびっと口に含んで、香が堅物教頭の声真似をして見せる。
「やだ、似てるー!」
トンと、コップを戻した小さなテーブルの上には、所狭しとおつまみのとその残骸が並んでいた。
英語教師の香は、いわゆる『トランジスター・グラマー』で、いつも体にぴったりしたミニ一歩手前のスカートをはいている。
今日は、そのミニ度が大きかったらしく、教頭のイヤミの洗礼を受けたのだ。
「何それー? いい大人にスカートの丈が短いって? さすが、堅物教頭!」
体育教師の私自身は、色気のないジャージ姿で過ごすことがほとんどなので、幸い個人的に何かを言われた事はなかったが、教頭が煙たい存在には変わりがない。
「で、山吹先生は今日、何かなかったのー?」
「え? うーん……」
香の言葉に私は、『例の写真』の事を思い浮かべた。



