さて。
いざ掛けようとしたその時、
「山吹先生ー」と声を掛けられ、慌てて携帯電話を上着のポケットに突っ込む。
職員室での私用電話は、一応禁止されているのだ。
と言っても、みんな適当に上手く隠れて使っているのだけど――。
「ねえ、今日コレ行かない?」
視線を巡らせると、ドアの所で仲の良い英語教諭の市川香(かおり)が、カラオケマイクを握る真似をして笑顔を浮かべていた。
「え? う~ん。今日は、どうしようかな……」
いつもなら二つ返事でOKする。
でも今日は例の写真の件があった。
行きたいのはやまやまだが、どうしたものか。
少し迷っていると、香からダメ押しがかかった。
「何? 彼氏とデートでもあるの?」
「ないない!」
そんなに急ぐほどの事もないか。
あいつに相談するのは、また今度にしよう。
結局、
誘惑には勝てず、私は『写真を持ったまま』カラオケに行くことになった。



