-恐怖夜話-


「雅……美?」


若菜も異常を感じたのだろう、呟く声が微かに震えている。


「写真……写真がね……」


と、雅美は浮かされたように呟きながら、自分の鞄から布製のペンケースを取り出し、中に入っていた油性の黒マジックを一本手に取った。


「写真が何? いくら友達だって、勝手に人の鞄を開けて出していいわけがないじゃない? 今日の雅美、変だよ!?」


尚もニコニコと虚ろな笑いを浮かべた雅美に、若菜はぴしゃりと言い放ち、まだ怒りが収まらない眼差しを向ける。


――そう、変だ。


雅美は、断りもなく他人の荷物を開けるような真似をする子じゃない。


私と、若菜。


二人の探るような視線浴びて、雅美は笑顔を貼り付けたまま『カクッ』と小首を右に傾げた。