「もしもし? もしもし?」
私は携帯の終了ボタンを押して、もう一度自宅へかけ直してみた。
「バッテリー切れじゃ……ないよね?」
耳に当てた携帯電話からはやはり、何の音も聞こえてこない。
「もうっ、なんなのいったい!?」
確認してみても、電池マークも十分残っているし、アンテナも綺麗に三本たっている。
考えられる原因は、携帯電話自体の故障しか思い浮かばない。
救いを求めて周囲に視線を走らせるけど人影などあるわけもなく、頼みの綱の駅の公衆電話はもう1ヶ月も前から『故障中』の張り紙がしてあって、今も使えない状態のままだった。
こういう時に使えないって、なんのための文明の利器なのよ!
『はぁーっ』
本当、ついてない……。
湧き上がる不安と憤りを吐き出すような大きな溜息をついて、私は駅舎の外にある薄暗い自転車置き場に、トボトボと足を向けた。



