いちまいの絵画のやうに、貴女を独占できたなら。

それは、どのやうにすてきなことか。

私にわかろうはずもございません。

貴女が愛する私の奥に、もう一人の私がゐて。

もう独りの私がゐて。

貴女のましろな指先に虫ピンを打ち込んで。

うつくしい蝶々の亡骸のやうに。

標本箱に閉じ込めることさえできたなら。

それだけで、私の人生十分でございます。

それができないのが憎たらしいところでございまするが。

それをいたせば私とてただの罪人。

いまは只、貴女の似姿をこの絵筆でカンバスに塗り込められるだけで。

幸せなのでございます。