あれは、奈津と出会う二ヶ月前のこと――…… その日の朝。 僕は寝坊してしまって、会社に滑り込みセーフで着くか、アウトになるか、そんな瀬戸際だった。 いつもの電車に乗り、目的地に着き、ドアが開くと同時にホームへと飛び出した。 ――ドンッ……! 「いた……っ……」 その時、僕は、自分と同じように急いでいる様子の中年のサラリーマンにぶつかってしまった。 ぶつかった衝撃で、僕はバッグを落としてしまい。 急いでいたあまり、開けっ放しになっていたから、最悪なことに中身がバラ撒かれてしまったんだ。