画面に表示された彼の名前を呟いてみる。 「日浦奈津……、奈津ちゃんか」 彼もまた、あたしの名前を口にし、“奈津ちゃん”と親しみを込めて呼んでくれた。 「それじゃあね、奈津ちゃん。連絡するよ」 「はいっ。待っています!」 彼……直樹さんが立ち去ったあと、あたしは彼の背中が見えなくなるまで見送った。 ――すごい、すごいよ。 バッグを盗まれたのをきっかけに、こんな出会いがあるなんて……。