テディベアはしゃべらない

その真っ黒い目が、

「――で?」

と睨みました。

森山くんをではなく、私を。

「そこでバカみたいになってる、それこそ頭ン中が綿だかビーズだかっぽそうな、とっぽいお前、だれだよ?」

……見た目もワルそうなら言葉遣いも悪いですね。

さすがの私でも、こんな風に言われたら「むっ」という顔になります。

「ま、またまた~」

と、酸化反応から森山くんが復活しました。

「僕がつれてきた時点でなかばわかってるくせに。そうやって毎回とぼけるのは悪いくせだよ、壮馬?」

「なにせ、俺の頭はスッカスカだからな」

「う。謝るよぉ、それは~」

壮馬という彼は、どうも目付きと口調どころか、性格そのものが悪そうです。

(帰ろう)

思った、その時でした。

「おい――高村まひる」

彼が、壮馬くんが、改めて私を呼びました。

ただし、その目は私を見ていません。

ここへやって来た時に抱えていた、今はテーブルに置かれている箱の中身を、じっと見ています。