夏が終わり、厳しい暑さも緩みだいぶ過ごしやすくなった。

この日は雨だった。

気温も下がり肌寒い。

みんな足早に通り過ぎてしまうから、こんな時は客が少ない。

コーヒーを2つ出しただけで、その他はグラスを磨いたりカウンターの上の植木に水をあげたり。

小さな喫茶店はとにかく暇だった。



カランコロン



ドアベルが鳴った。

入り口に立っていたのは喪服の男だった。

男は20代のように見えた。

俯いたまま入り口に近いテーブル席に腰掛けた。

グラスに水を注ぎ、おしぼりと一緒に彼の前に静かに置いた。

「ホットコーヒー1つ、少し濃いめで」

そう呟いた声は掠れていた。

「それと、とびきり甘いミルクティー」

そう言った彼は悲しそうに微笑んでいた。