「最後の頼みでいいから、先輩を探そうなんて言わないから。だから今日だけは一緒にいて欲しい」
電車が到着したのか、辺りに人が増し、その中で頭を下げる拓斗の姿に周りの視線が突き刺さる。
好奇の目は当然、呆然と立ち尽くす大人しそうな美少女にも……。
それに気付いた静奈は慌てて拓斗の服の裾を引っ張った。
「分かったから……とにかくここから離れよ?」
もうセンパイの事はいいって……確かにそう言った拓斗。
それだったら、一日ぐらい一緒にいるから……と。
顔から火が出そうになるぐらいの恥ずかしさに耐えて、静奈は歩き出す。
心の奥で、渡したくない……そう叫んだ拓斗が消えないまま。



