そして……約束の当日。
結局面と向かって断れないまま、静奈は待ち合わせ場所にいる。
朝から少し迷って……結局久しぶりに手にしたのはハニーリップじゃなくて、オレンジのリップ。
もうこれ以上噂が広まるのは嫌だ。
センパイの為にも……封印した方がいいのかもしれない。そんな事を思いながら、薄く小さな唇に塗りつける。
新しい気持ちで塗ったリップはいつもよりもしっとりしてなくて、お気に入りを塗れない事がちょっとだけ悔しいけど
だけどこれからは変わるんだから。
拓斗とは行けないって断って、センパイを信じていくだけ。
そう思ったら簡単な気がした。
……のに。



