「その静奈の事なんですけど」
「うん」
「昨日、静奈凄く嬉しそうにしてました」
「そっか」
「彼女……ずっと沼田センパイに憧れてたんです」
明日香の言葉に沼田は……そんな事はとっくにお見通しだとは少しも表情に出さず、驚いた表情を作ると
「そうなんだ。嬉しいよ」
そう言って爽やかに笑う。
「嬉しいって事は……じゃあ!」
「今日も静奈ちゃんにメールした所」
胸ポケットに入った携帯を軽く振って見せた沼田に明日香の表情も緩む。
「静奈……変な噂が広まって落ち込んでたんです。センパイからも支えてもらっていいですか?」
黒髪を揺らし、頭を下げた明日香の頭上でにやりと笑った沼田の事になんて気付かない。
「もちろんだよ」
優しい声に見送られ、授業開始のベルが二人を引き離した。



