静奈の異変に気がついたのは拓斗も同じで…… それがここ最近見せつけられている恋する瞳だと気付くのに時間はかからない。 「誰?」 「何でもないの」 不機嫌そうな拓斗の問いを遮るように、更に廊下へ背を向け丸くなる静奈の顔はほんのりと桜色。 それは……遠くから優しそうで素敵だと憧れていた人がこんな近くにいるんだから当然の事。 そして、そんな人の耳にきっと入ったであろう自分のありえない噂。 興味本位で友達と見に来たに決まってる。 軽蔑される事に怯え、静奈は長い睫をそっと伏せた。