暇だ。
私はベットにごろんと横になる。
ニ週間も経つと、することがなくなってしまったのだ。
家事のほとんどは家妖精がやってくれるし、裁縫をしようにも作る物が思いつかない。
誰かと話したかったけど、残念ながら私には家妖精が見えないのだ。
物音のしない館は広く暗い。
今頃あの二人はどこにいるのだろう。
国境付近なんて行ったことがない。想像すら出来なかった。
館の中に独りきり。
独りは寂しい。
自分という存在の輪郭がどんどん失われていくようだった。
長く独りだったユゼも、こんな風に思ったのだろうか。
青珀の吸血鬼、ユーゼロード。
なぜか、どんどんと不安になってくる。部屋の隅に落ちる闇が一層濃くなったように見えた。
『青珀は、人を恨んでいる』
私の不安を広げるように闇が囁く。
がばりと私は起き上がった。そして辺りを見回す。
自分じゃない誰かの声を聞いた気がしたのだ。
だが、部屋には誰もいない。
『人を恨んでいるから、お前を贄にしたのだ』
また、どこからともなく響いた。
私の不安を見抜いていく。
『お前は、見せしめなのだ』
違う。
そんなことはないと信じたい。
信じたいのに、少しずつ自分が惑わされていくのを感じた。
『お前に贄以上の価値はない』
どこから声が響くのか、私はようやく理解する。
私の心の中だ。
私の孤独と不安が共鳴している。
『所詮、吸血鬼にとって、人は食料でしかないのだから』
違う、違う。そんなことない。
私は必死で打ち消した。
『だから、青珀にとって自分は特別な存在ではない』
否定する心を嘲笑うかのように闇は続ける。
『好きになってはいけないのだ』
好き。誰を。
「私が、ユゼを好き?」
そう、なのかもしれない。その言葉は逆に私を納得させた。
ここ最近、苦しかったのは、それに気付かなかったからなのかもしれない。
気付いてしまえば、なんだという気持ちになった。
だけど、同時に疑問が浮ぶ。
何かが、おかしかった。



