5月某日。あの忌まわしい日から2日が経ち、今日からまた憂鬱な学校が始まる。


昼休みが始まった頃に着くように家を出たから、今は4時間目が終わる頃のはず。


「あれ? 瑠雨だっ!」


上履きに履き替えていたあたしに突然後ろから飛び付いてくる人物なんて、この学校じゃひとりしかいない。


「透……暑苦しい」


振り向けば案の定、前髪を星のヘアゴムでちょんまげにした透が立っていた。


「瑠雨も寝坊?」


ニカッと笑う透は、カーディガンの変わりに着ているオレンジのパーカーがよく似合ってる。


赤いスニーカーを下駄箱に入れる透の横で、あたしは学校指定じゃない白いブレザーのポケットに手を突っ込んだ。


「不愉快でダルかった」

「ふ……ふゆ、不愉快?」


「何が?」と首を傾げる透と並んで歩き、教室へ向かう。


「アイツだよ、アイツ」

「アイツって誰?」

「ちぐさ れお!!!」

「ちぃ君!? また殴ったの!? 暴力はダメって言ったのに!!」

「何で殴った前提なんだよ!」


そりゃ名前を口にするのも話題にするのも吐気催すほど嫌いだけど!


「何かあったの? も~……瑠雨は美人なんだから、拳なんて握っちゃダメです!!」

「握りたくもなるんだよ。あの変態クソ野郎」


階段で2階に上がり、2-3に向かう途中でチャイムが鳴った。