「それだけ?」

「……は?」


俺に助けてもらって、家に泊めてもらって、送ってもらったのに、ありがとうの一言で済むと思ってんの?


「何? お礼以外何しろっつーのよ!!!」

「お礼だけで済むか」

「マジで何様!?」

「これ見ろ」

「……はぁ?」


携帯を開いて見せた俺に瑠雨はシートに手をつき、体だけ乗り出して携帯を覗きこんだ。


――単純で、なにより。


「これがな……っ!?」


携帯を覗き込んでいた瑠雨の顎を持ち上げて、ペロリと唇を舐めた。


固まる瑠雨を至近距離で見つめると、何をされたのか理解したらしく、どんどん紅潮していく頬に笑みが零れる。


「ふっ。……真っ赤」

「な……なな……なっ」

「ちゃんとしてやろうか?」


クイッと顎を持ち上げると、我に返った瑠雨は俺を押し退け、仰け反った。


「何すんのよ!!!」


車の外で真っ赤になり口元を押さえる瑠雨に反して、俺はハンドルに頬杖をつく。無論、悪戯に口の端を上げながら。