「っにすんだよ! 危ねぇだろーがっ!」


ムカついたから顔が挟まれる瞬間を見たかっただけだというのに、反射神経の良さ発揮してんじゃねぇよ。空気読めよ。


驚いた顔もなかなか面白かったから、もういいけど。



笑いを堪えながらエレベーターを降り、アパートを出る。腕時計は3時半前をさしていた。


「……ちょっと!」


駐車場に向かって歩いていた足を止めて振り返ると、瑠雨がまだアパートの入り口に突っ立ていた。


何してんだアイツ。何この微妙な距離。何で俺がお前と見つめ合わなきゃいけねぇの? てか何で挙動不審なわけ?


何か……カユいんですけど。


「何してんのお前」


カユい。何かカユい。


「……あ、のさぁ……」


ちょ、何? 何で若干照れてんの?


「気色ワリィ! 何だよっ」

「はぁぁああ!?」


身震いした俺は再び歩き出し、「ちょっと!」なんて呼び止められても脚は前に進む。