「レオに見つめられると、アタシ……」
「……」
何かモジモジ床見つめながら喋ってるみたいだけど、がっつり耳を塞いでるんで何も聞こえません。
パチ、と目が合った時にはもう、オッサンは両耳に人差し指を突っ込んでいた俺に体を震わせていた。
「あたしの告白聞いてなかったのぉぉおお!?」
「聞いてやるから今すぐ耳栓買って来い」
「レオのバカぁぁあああ!!!」
女の涙は武器になったとしても、オッサンの涙は泥水と一緒だから効果なし。
スタッフルームを飛び出して行ったオッサンの背中を見届けて、やっと賄いのパスタにあり付く。
すると、開け放たれたままのドアから陽に焼けた顔を出した男がひとり。
「まぁた店長イジメたんだろ、ちぃ」
「ようNo.2。今日もご苦労さん」
鼻で笑えば指名率No.2の大声が部屋に響いた。



