天然店員は俺様王子



「はーあ。めんどくせ。アイツ超めんどくせ」

「まず謝ろうか? 俺に謝ろうか?」

顔中引っ掻き傷だらけの隼人は謝罪を求めてくる。


「…………」


ウケる顔だな。お、ミミズ腫れになってきた。かわいそうに。


俺は真顔で隼人を見つめ、ハッとした顔を作る。


「隼人!? どうしたのその傷! あ、顔痒かったの!? ダメだよ掻いちゃ~…あーあ……オロナイン塗りなね?」


-mia-でのキャラを演じて首を傾げてみれば、隼人はワナワナと体を震わせた。


「テメェ劇団入れ! 売れっ子になって二度と俺の前に現れんな!!! 天然猫被り! バーッカ!!!」

「じゃあ降りろ。今すぐ俺の愛車から降りろヘタレ。轢いてやんよ」


顔を近づけて睨み付けると、ヘタレは視線を恐る恐る逸らす。


「すいませんマジすいません」

「ボケが。ヘタレ。チキン。ナイーブ」

「ナイーブは余計だっつーの!!」


ヘタレとチキンは認めてんのかよ……。