「――あら。まだやってたの? もう帰っていいわよ~」
「店長。買い出しお疲れー」
従業員の飲み物などを買いに出ていたオッサンが店に戻ってきた。
特に反応せずにいると、体にまとわりつくような猫なで声に名前を呼ばれる。
「レオ~ッ。ほら、頼まれてたお菓子買ってきたわよぉ」
キャピキャピしながら顔の目の前に飴の袋を差し出すオッサンの表情と言ったら。
まるで好きな人を前にして浮かれた心を隠せない乙女のようで……。
「スタッフルームに置いとけ」
「その前にありがとうのキスでしょおっ!!」
──バシィンッ!と飴の袋をオッサンの顔に叩きつけてやりたくもなるよな。
「警察に突き出してやろうかオッサン。あぁん!?」
床に落ちた飴の袋。
お目見えしたオッサンの顔はジワジワと赤くなって、俺を見る瞳も濡れていった。



