「アンタのそのバカにしたような笑い方がムカつくっ!! 何で客は気付かないかなっ!! どこが天然だよ!!」
「瑠雨にはその方が良くね?」
俺は意味深に微笑んで、車の鍵を開ける。ガシャッンと音がしてから瑠雨が口を開いた。
「……何が?」
振り向いて、首を傾げる瑠雨の前まで詰め寄る。
「“俺”のこと、独り占めだろ?」
悪戯に笑う俺を見上げて、ポカンとする瑠雨の耳元で囁く。
「瑠雨限定の、俺様」
見ると、瑠雨の頬は赤く染まっていて、目が合うと慌てて俯かれた。その姿に自然と笑みが零れる。
「俺はお前だけの王子だよ」
手の甲で瑠雨の頬を一撫でして、車のドアに手を掛けた。
「…………好き」
ピタッとドアを開ける手を止めて振り向くと、顔を上げた瑠雨と視線が絡まり合った。
「……って、言いたくなった」
恥ずかしそうにしながらも真っ直ぐ俺を見て好きだと言ってくる瑠雨に、愛しさが込み上げてくる。
「俺も好きですけど、何か?」
月明かりが幸せそうな瑠雨の笑顔を照らした。
想いが通じ合ったこの日から、前よりもっと、毎日が輝き出す。