「……別にいいって言ってんだろ。傷自体浅いし血も固まってんだから、俺ひとりで出来る」
「いいからしてもらえってちぃ~」
ニヤニヤすんなヘタレ。手当てじゃ済まない傷でもつけてやろうか? 先に救急車呼んどいてやんよ!
「あたしたち先に行ってるわね」
奈々まで楽しそうに……いや、透までもがニヤニヤしてやがる……。
何コレ。透に言った覚えはないんですが、俺の気持ちバレバレなんですか? ふたりっきりにさせたいんですか?
有り難い気もするけど、ニヤつかれるのが気に食わねぇ……。
「救急箱そのままにしとくから、あとはお願いね? 瑠雨っ」
再び瑠雨を見れば、小さく頷いていた。
「…………」
黙ったままでいると、オッサンと隼人がふたり揃って頬を緩ませて俺を見てくる。
「良かったわね2人きりよ~?」と言いたげなオッサンと、「告れよ告っちゃえよ~!」と言いたげな隼人。
一思いに蹴散らしてやりたかったが、有り難いことには変わりないので殴るのは後回しにしておくことにした。



