「アンタ猫かぶってるでしょ」
「――……」
おいおいちょっと待て待て。
この状況で、どのタイミングでバレたわけ? てかいきなり何言い出すんだこの女。
「えっ……と。瑠雨ちゃん、猫は被るものじゃなくて飼うものだよ?」
完璧に戸惑った表情を見せた自信があった。それなのに、瑠雨の顔からは笑みが消え、グレーの瞳がギラッと光った気がした。
その瞬間、────ゴッ!と渾身の左ストレートを右頬に喰らった俺。
「このクサレ外道が」
神様。これ夢ですか? 夢なら早く覚ませ。
あ、俺神様信じてなかった。
「いっ……てー……」
「っぎゃーー!!! 何してるの!? 初対面の人に何しちゃってんの瑠雨!!!」
「こいつが昨日あたしの後輩フったんだよ」
……うわ……思い出した。
この女、昨日コンビニの前で電話してた奴じゃねぇか。



