「1枚でいい」
「1枚!? 物足りないわよ!!!」
「……つーか、写真より本人に逢いたいじゃん」
さっき、そう思った。
「何よ乙女ぶって。気持ち悪い」
殴っていいですか。感謝なんて言葉忘れて殴っても許されますか神様。
「写真はねぇ! 大事なのよ!!!」
「はぁ、そうですね」
シラケて言うと、「キー!!!」とか叫び出すオッサンに耳をほじりたくなる。
「写真は会えない時間に見るものでしょう!?」
あぁ……だからこの部屋にスタッフのバカデカい写真を……って一歩出ればホールにいるじゃん!!!
ドン引きしてるあたしに構わず、オッサンは話し続ける。
「会えない時間はね、相手を考える時間なのよ。相手のことがどれだけ好きか、大事か、考える時間なの。だから写真を持ってるといいのよ」
「……別になくても良くない?」
「こっれだからお子様はっ!!!」
やっぱ殴っとこうか……。
「アンタが言ったんじゃない! 写真より本人に逢いたいって!! 会えない時に、触れることも触れられることもない写真を見てれば、次本人に会った時が全然違うのよっ」
オッサンは得意気にふんぞり返るけれど、そんな恋をオッサンもしたんだろうか。



