天然店員は俺様王子



「…………」


何を?と目で訴えると、オッサンは手に持っていた数枚の写真をテーブルに置いた。


反射的に写真に視線を移して、目を見開く。



「苦しんでたわ、とても。瑠雨を泣かせたって。西郡を殴って、キョウが割って入った時に瑠雨が泣いたって。……キョウが助けてくれて泣いたのか、西郡に言われたことに傷付いたのか分からないけど、どっちにしても泣かせたのは自分に変わりないって」



耳で、麗桜の気持ちを知って。目で、麗桜の苦しさを知った。


「キョウみたいに穏便に済ませれば、西郡の言葉を遮れば……瑠雨は泣かなかっただろって、言ってたわよ」



……違う。違うよ、麗桜……。


あたしは、麗桜が助けてくれたことが嬉しくて、麗桜がどうしようもなく格好良く見えて……。


「レオは今まで生きてきて、自分の思い通りにならなかったことはないらしいからね。……初めて壁にぶつかったレオ、可愛いでしょう?」


テーブルに置かれた写真を見ていた瞳から、一筋の涙が零れた。


レオの苦しげな、表情。泣きそうな表情。苛立ってる表情。切なげな表情。


たくさんの、麗桜の写真。



「その写真は全部、瑠雨の話をしてた時のレオよ」


その言葉に、ジワリと涙が滲んだ。


何なの。オッサンに泣かされるなんて、悔しい。オッサンがあたしに助言するなんて、気に入らない。


でも、感謝するよ。


知らなかった麗桜の姿を知れたから。