天然店員は俺様王子



「……俺ダセェ……」


車で走り去る前にバックミラーで瑠雨を見た。駐車場に立ち竦んで、俺が投げつけたカーディガンを抱き締めて、俯いていた。


少し期待して、すぐにやめた。



「いいわねぇ。レオじゃないレオって素敵だわぁ~」

「「……は?」」


気持ち悪くも、俺と隼人の声がハモる。オッサンはデジカメを持って、睨み付ける俺を撮った。


「今のレオ、素敵だわ」

「どっこが………」


俺はオッサンから視線を外して、眉を寄せてそっぽを向く。


今の俺なんて、ダセェだけじゃねぇかよ。こんな臆病になるなんて、俺じゃねぇだろ。


「恋なんてそんなものよ? レオ。悩んで、戸惑って、腹が立って、傷付いて……どうすればいいか分からなくて、泣きそうになるの」

「……だから何だよ」


聞く耳を持たない俺にオッサンはふふっと笑って、何やらデジカメを操作してるらしかった。



「自分でも知らない自分を見つけたり、自分が自分じゃなくなってしまうと感じたり。それって、誰が相手でも気付くことじゃないわ」

「あー俺なんかその感覚分かる」


隼人が言うと、オッサンは「隼人は素直だからね」と笑いながら俺の向かい側に座る。