天然店員は俺様王子




「テメェが好きだからだろ!!!」


愛車の窓ガラスすれすれのボディを、拳で叩きつけた。


……クソ。


愛車に叩きつけた拳を開いて、自分の額を覆った。俯いて、目を瞑って、唇を結んでも、形容しがたい感情しか溢れてこない。


こんな風に、言うつもりじゃなかった……言うつもりは、なかったってのに。


状態をそのままに、俺はゆっくり口を開いた。



「好きなんだよ。……瑠雨」


俺は、お前が好きなんだ。



「な、に……あ、あたし……?」


……そうだよ、お前だよ。


顔を上げたのと同時に、額を覆っていた右手を力無く落とした。目が合った瑠雨は、戸惑った表情で俺を見ている。


ほらな。


だから、嫌だったんだ。



「――っ麗……!?」


運転席のドアを開けた俺を呼び止めようとした瑠雨に、車に置いてあった黒いカーディガンを投げつける。


「それやるから、もう俺に近付くんじゃねぇ。キョウなんかと-mia-に来たら、締め出すかんな」


言いながら瑠雨の顔も見ずに運転席へ乗り込み、何か言われても聞こえないように荒々しくドアを閉め、すぐにエンジンをかけた。