天然店員は俺様王子



「俺のセリフだって、何? 何で?」


やめろ。


「ねぇ。何か言ってよ」


やめろ。


「……麗桜……」

「――うるせぇ!!!」


ビクッと瑠雨の体が揺れる。見ると、瑠雨は目を見開いてグレーの瞳から涙が落ちた。


その様子を見て、眉を寄せる。


泣きたいのは俺の方だ。


そう思うのと同時に泣かせた罪悪感と、みっともないけどまた淡い期待を感じた。


瑠雨が俺の名前を呼んだだけで、どうしようもないくらい胸が高鳴ったのに。今の俺は瑠雨に触れることさえ出来ない。



「……何で何でって、うるせぇ」


好きだと言われたら戸惑うくせに。困るくせに。


……いい加減、自分がうっとうしくなってくる。女々しい自分に、腹が立ってくる。


「早く帰れ」


これ以上惨めになりたくねぇ。これ以上、我慢出来る気がしねぇ。


「だから……何でそんなこと言うの」


目に涙を溜めて零しても、ひたすらその目で俺を見上げる瑠雨に拳を握った。


「……黙れって」

「何でって聞いてんの!!!」



──ガンっ!!!