カラフルな髪をしたソイツが、ゆっくり顔を上げた。


「――れぉ……」



瑠雨、何で。何で俺を待ってんだよ。


嬉しいくせに、腹が立つ。


こんなことすんな。期待なんか持たせるようなこと、すんじゃねぇよ。



「何してんの」


わざと、冷たく言う。そうしないと苦しさが顔に出そうで、平然を装わないと、抱き締めてしまいそうで。


瑠雨は少し眉を下げて立ち上がると、俺の包帯に巻かれた手を見た。


「……ありがとう。助けてくれて」


その言葉にギュッと胸が苦しくなったけど、俺は相変わらず素っ気なく答える。


「別にお前の為じゃねぇよ。俺がムカついたから殴っただけだ」


……早く帰れ。

頼むから、早くこっからいなくなれよ。


「それだけ?」


そう聞くと、瑠雨は左腕をさすりながら俯いた。



それだけを言うために、ずっと待ってたのかよ。お前が準備室に来てから、1時間以上は経ってるぞ。


ブレザーもカーデも着ず、ワイシャツだけで……まだ5月だろ。夕方だし、寒いじゃねぇかよバカが。