「気をつけて帰れよ。手、大丈夫なんだろ?」
職員玄関まで見送ってもらい、ショートブーツに履き替えていると月にぃは包帯が巻かれた俺の手を指差した。
「ああ、全然ヨユー」
西郡の眼鏡を粉砕した時に、手の平を切ったことすら忘れてた。
「何か悪かったな」
俺がそう言うと、月にぃはニヤリと笑う。
「俺の立場の心配すんなんて十年早いんだよ」
一回り違うだけでずいぶん偉そうだな。まあそう言ってもらうと心置きなく立ち去れますけど。
「――……」
ふと、瑠雨に月島は従兄だと言った時、それっぽいと言いたげな顔をされたのを思い出して思わず口元が緩んでしまった。
「今度駅裏のパスタ屋来いよ。奢るから」
「はぁ? 嫌だね! あそこ女客ばっかじゃねぇかよ」
「だからだっつーの」
「ちぃテメェ……」
「ふっ。じゃーまたな」
怒りそうな月にぃに軽く手を上げて、職員玄関を出た。



