「荷物まとめたか?」


月にぃは携帯灰皿に煙草を押し付けながら言い、俺はぐるりと準備室に視線を張り巡らせる。


「まとめねぇよ。必要ねぇから捨てる」


実習生活は、今日で終わり。学年主任を殴ったんだから当たり前の処分だが、別にどうでも良かった。


月にぃには悪いけど、実習生としての単位も評価も俺にとっては最初からあって無いようなものだ。


学校に来たのだって、瑠雨を手懐けようとしただけ……っていう不純な動機だからな。


まあそれも、意味ねぇもんになったけど。



「瑠雨たちに処分はねぇんだろ?」


ほぼ手ぶらの状態で月にぃと準備室を出る。校舎に人影はなく、部活動中の生徒の声が時たま聞こえる程度だった。


「ねぇな。てか無理だろ。三神と王良を敵に回したら、こんなショボい公立高校すぐ潰されんだから。神と王だぞ?」


いやそこどーでもいい。たかが名字じゃねぇか。


つーか自分が勤めてる学校をショボい公立って……鬼だな。


「三神も王良も、場違いのお嬢様と御曹司だからなぁ。西郡先生本気でビビッてたな」


悪戯に笑う月にぃに、曖昧に笑い返すことしか出来なかった。



王良ね……大層な名字だなキョウ。


おうら……オーラありますもんね君は。って俺頭メルヘンになってきてるわ。かなりダメージ受けてるわ。