「……お前、そんなバカだったか?」


ひっそりとしていた放課後の数学準備室で沈黙を破った声と共に、煙草の煙がゆらゆらと漂う。


「うっせーよ、月にぃ」


身を隠していた机の下から出て立ち上がると、従兄の月島先生こと月にぃが煙草をくわえたまま閉ざされたドアを見つめていた。


「会ってやりゃぁ良かったのに」

「会ってどうすんだよ」



瑠雨が、準備室に来た。


来るかもとは予想していたから俺はずっと隠れていて、月にぃに適当なことを言って貰った。


会いたくなかった。会いに来てほしくもなかった。


俺はバカか。


会いに来なかったら来なかったで、悲しくなるくせに。



「だってちぃ、村上の為に西郡殴ったんじゃねぇの?」

「……ムカついただけだっつーの」


別に瑠雨の為とかじゃねぇよ。西郡が、瑠雨の兄貴のことを言った途端、瑠雨が傷付いた顔をしたからムカついただけだ。


「お前は賢いと思ってたんだけどなぁ。……お前がねぇ……ふーん」

「なんだよ」

「何でも?」


このデコっぱち野郎。ハゲろハゲ。